革製品を選ぶ際にレビューを見ていると、“コバ”という単語がよく使われていることに気付くと思います。
例えば「コバの処理が綺麗だった」や「コバ塗りが雑だった」などという言い方をされていますね。
コバというのは、革の端=切り口のこと。
つまりレビューでよく言われているのは、革の切り口の処理が丁寧かどうか、ということなんです。
革製品を見てみると、端っこの処理ってどれも同じという訳ではありませんよね。
ベルトのように切りっぱなしだったり、あるいは内側に折り込まれていたり・・・
そこで今回はコバの処理を中心に、革の端の処理方法について代表的な6種類を紹介していきます。
革のコバを処理するのは補強のため
コバというのは、革の端のことを指します。
漢字で書くと「木端」となり、これは断面が木の切れ端と似ていることから名付けられたそうです。
どうしてコバを処理する必要があるかというと、切りっぱなしで断面がむき出しの革は見た目が悪く、耐久性も良くないから。
キーケースや財布など、よく使うものってどれも角っこや端から傷んできますよね。
そういったダメージから革製品を守るためには、革の端部分を補強する必要があるという訳なんです。
ベルトのような厚みのある革製品は、切りっぱなしのものもあります。
切りっぱなしの断面に軽く仕上げ剤を塗ったものを「切り目(きりめ)仕立て」と言います。
切りっぱなしだと、見た目はわりとワイルドな印象になってしまいますね。
それに耐久性のない断面から革が黒ずんだり潰れていっては、せっかくのデザインが台無し。
特に財布などの薄い革は、端がきちんと処理されていないとふにゃふにゃでダメになりやすいので、コバ処理が必要なんです。
主な革の端の処理法6つ
革の端を処理する代表的な方法はコバ磨き、コバ塗り、パイピング、へり返し、菊寄せ、ネン引きの6つです。
それでは順番に見ていきましょう。
コバ磨き:やすりで整える
引用元:https://www.porco-rosso.co.jp/c/column/progress/pg-05
コバ磨きは毛羽だっているコバの断面をなめらかに、良い手触りに仕上げる処理の仕方です。
また、貼り合わせた革の段差も揃うように整えます。
やり方は、やすりを使って断面を削っていく方法が一般的。
コバ磨きだけで仕上げる場合、後からコーティング剤や塗料が塗られることはありません。
磨いていくと、どんどん深いツヤが出てきます。
力を入れて強く磨きすぎると変色してしまうので、適度な力加減で行うのが重要です。
磨く度合に基準はなく、様子を見てもう良いだろうと思えた時点で作業が終わりになります。
そうして完成する革の端は、とても自然な印象。
塗装などでごまかすことができないため、職人さんの技術がないとできない仕上げ方です。
コバ塗り:やすり後に仕上げ液を塗る
コバ塗とは先程のコバ磨きをしたあと、透明な仕上げ液を塗って固める方法です。
仕上げ液は顔料や染料、またはニスなど。
液を塗るといっても、筆でベターっと塗ってハイおしまい!ではありません。
細い革の断面に薄ーく丁寧に、均一に液が付くように塗っていくんです。
綺麗なコバ塗りが施されたコバは、ツヤがあって上品な仕上がりですよ。
革製品によっては厚塗りして、コバ磨きの粗さをごまかすような仕上げ方をしているものもあるので注意して下さい。
パイピング:端を別の革で覆う
パイピングとは革のバッグなどによく見られるのですが、革の端を別の革で覆う仕上げ方です。
この場合、コバは完全に隠れて見えなくなります。
ちなみに、洋服の袖口などでも同様の加工方法がありますよ。
パイピングをする理由は、ひび割れを起こしやすい革や、ほつれやすい革を守るため。
また、デザインとしての要素で使われることもあります。
柔らかなシルエットにしたい場合は細いパイピングを、立体感のある無骨な感じを出したい場合は太いパイピングにすることが多いです。
具体的な手順は、コバの部分に細長くした布や革を巻きつけ、製品本体に縫い付けていきます。
くっつける細長い布や革の幅が、全体を通して均等になるように仕上げるのが職人さんの腕の見せ所です。
特に曲がっている箇所や角の部分は難しいところで、高い技術が詰まっているんですよ。
へり返し:革を裏側に折り返して固定
へり返しとは、製品の表側に使っている革のほうを、革の端で裏側に向けて折り返す方法です。
折り返した革は縫い付けるか、糊によって固定されます。
へり返しを行うのは、コバ磨きやコバ塗りがしにくい薄い革や、柔らかい革で仕立てられた製品。
小さい物や財布などでよく見かけますねー。
この方法でもコバは完全に隠れてしまうのですが、パイピングと違うところはスッキリしたシルエットになるという点。
また、コバが見える「コバ磨き」「コバ塗り」の処理と比べると、繊細でソフトな感じになります。
縫って仕上げられた場合は縫い目がはっきりわかるので、縫製の丁寧さがここでわかりますね。
菊寄せ:角をひだ状に寄せる
菊寄せとは、丸みのある角の部分の革をひだ状に寄せて処理する方法。
へり返しの処理の際、角部分に行われることが多いです。
こうすることによって革が変に余らずに、綺麗におさまるんですよ。
寄せられたひだが折り畳まれ、菊の花みたいに見えることから、菊寄せと呼ばれています。
この菊寄せは職人さんの指先で行われており、革の状態やひだの細かさなどに合わせてヘラなどの道具を選ぶそう。
職人さんによっては、ヘラ代わりに自分の爪を使っているという人も。
使う道具やひだの折られ方などに個性が現れるので、まさに職人技だと言えますね。
ネン引き:うすく筋をつける
引用元:https://www.porco-rosso.co.jp/c/column/progress/pg-05
ネン引きとは、コバや縫われたステッチの部分から一定の箇所か、へり返しの所にうっすらと筋をつける方法です。
装飾の意味合いで行われることも多く、立体感が出て引き締め効果があります。
ネン引きの方法によっては、縫製やコバが多少強くなるとも言われていますよ。
やり方は「ネン」と呼ばれる金属のヘラのような道具を押し当てて、熱を加えながら直線をひいていきます。
その他には、硬さのあるへラを使って手の力だけで直線を引いたり、線のある型を使って型押しして線を付けることもあります。
コバ処理だけでは製品を判断できない
『コバの処理でその製品の質の高さがわかる』と言う人もいますが、それって基準が曖昧だなぁと私は思っています。
例えばコバの上から厚めに塗料が塗られていたら、コバの処理が適当でも私達にはわかりませんよね。
あまりにも端の長さがそろっていなかったり、切れ目がガタガタだったりするのはもちろん論外ですが・・・。
製品の良し悪しを判断するには、その革製品にマッチしたコバ処理がされているか、という視点で見るようにしたらわかりやすいですよ。
コバの処理というのは、手順や方法が職人さんによって異なります。
だから正解はないんです。
職人さんは革製品の雰囲気に合わせた、コバの処理方法を考える必要があります。
例えば、ワイルドな見た目の革製品の端っこだけが、うるうるツヤッツヤで上品だったら浮いてしまいますよね。
つまり、つややかに綺麗に仕上げるだけが、コバ処理の正解ではないということです。
大事なのはあなたがその革製品の全体を見て、(実店舗であれば)端まで触れてみて、好みだなと感じること。
全体的なデザインが整っているなぁと感じるものを選ぶのがおすすめです。
まとめ
コバを中心に、革の端の処理方法6つをご紹介しました。
コバ磨きやコバ塗り、へり返しの処理は目につきやすい部分ですが、菊寄せやネン引きは意識して見てみないと気付かない部分ですよね。
細かい部分まで、職人さんは手間と愛情をかけて処理してくれているんです。
それを知ったら、自分の革製品を大切にしなくちゃと改めて思いますよね。
今まではコバのレビューを見ても、曖昧にしかイメージできなかったあなたももうバッチリです。
次に革製品を購入した時は、今度はあなたがコバのことまで具体的に書けるレビュアーとして活躍して下さいね♪
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