革ってヌメ革と呼ばれる革っぽい雰囲気のものから、けば立ったスエード、ツルツルしたエナメルなど色んな種類のものがありますよね。
でもこれらは全て、元をたどれば動物の「皮」だったもの。
この皮が革になっていく工程の間に加工されて、色んな見た目や手触りの状態に仕上げられていくんですよ。
仕上げられてできる代表的な革は、なんと14種類にも上ります。
今回はこの革の仕上げ方について、14種類全てをどーんとご紹介しちゃいますよ~!
革の仕上げ方の種類14通り
冒頭でも言いましたが、革の代表的な仕上げ方はなんと14種類もあります。
- ヌメ革
- シュリンク
- オイルレザー
- ブライドルレザー
- 銀(吟)付き革
- ヌバック
- ベロア
- スエード
- 床革
- エナメル(パテントレザー)
- ガラス張り(ガラスレザー)
- もみ革
- 型押し
- 毛皮
この仕上げ方の名称をそのまま製品名に使うことも多いので、あなたが聞いたことがあるものも結構あると思います。
これらを加工するタイミングは、革ができるまでの工程↓
の、どこかのタイミングになります。
タイミングは同じじゃないの?
加工の種類によってそれぞれ違うんですよ。
加工について、今回は多くの業者さんが行うというタイミングを基準にして、先程の工程図の番号でご紹介していきます。
場合によっては違うこともありますので、あくまで参考として考えて下さいね。
それでは仕上げの種類ごとに、順番に説明していきますよ~!
ヌメ革:余計な加工ナシ
引用元:https://tsuchiya-kaban.jp/blogs/library/20130513
タンニンなめし(冒頭の工程図の⑥)をした後、染色などの色付けの加工をしない
ヌメ革は革らしい自然な印象そのままの、茶色やベージュ色の革です。
厚さがあって、手触りがなめらかなのが特徴。
最も革らしい風合いが残っているのがこのヌメ革で、革好きに多く好まれる傾向があります。
シュリンク:薬品でシワ模様付け
革の表面が縮む作用のある薬品を使用して、シワ模様をつける(工程図⑥で実施)
シュリンクとは、革らしく見せるために、表面に革のようなシワ模様がつけられた革です。
この模様は、なめす際に使われる薬品によって作り出されたもの。
柔らかい手触りとしなやかさがあるので、人気があります。
傷がついても模様のおかげで目立ちにくいので、使いやすさに定評がありますよ。
オイルレザー:たっぷり油を含ませる
引用元:https://item.rakuten.co.jp/galleria-annex/flat4/
タンニンなめしの際に、多量のオイルを染み込ませる(⑥で実施)
オイルレザーはなめしの際に、オイルをたっぷり染み込ませて作ります。
バケッタレザーという名前で知っている人もいるかも知れません。
オイルレザーは、柔らかさや耐水性が強化された「強化レザー」とも呼ばれます。
使われるオイルは合成油から魚や牛、植物性のものと様々。
しっとした手触りと、オイルによる独特のツヤ感があります。
使い込むうちに染み出てくるオイルでツヤが増すので経年変化がわかりやすく、人気がありますよ♪
ブライドルレザー:蝋を染み込ませる
引用元:https://tsuchiya-kaban.jp/blogs/library/20171016
タンニンなめし、染色の後に、蝋や蜜を染み込ませる(⑪の後に行う)
ブライドルレザーは、何か月もかけて蝋(ろう)や蜜(みつ)を染み込ませて作られます。
とても強い耐久性があるのと、蝋によってできるツヤが魅力。
また、油分が多いため水にも強いほうです。
作るのに何か月もの時間と手間がかかっているので、高価で販売されていることが多いです。
ブライドルレザーの特徴として、革の表面に白い粉が浮き出てくる現象があります。
これは染み込んでいた蝋がでてきただけなので、異常ではありません。
耐久性があるため、乗馬で使われる鞍(くら)などにも使われています。
銀(吟)付き革:表面を生かした仕上げ
引用元:https://ogasawara-leather.jp/topics/412/
なめした後、染料を使って仕上げる(⑪で実施)
革の表面側のことを『銀面(ぎんめん)』や『銀(ぎん)』と呼びます。
だから、銀付き(ぎんつき)というのは、表面が付いている革、という意味です。
銀を「吟(ぎん)」と表記することもありますよ。
つまり銀付き革とは、この表面の革を生かして染料で染めた仕上げ方なんです。
革表面の模様をそのまま残すので、表面が綺麗な質の高い革しか使えません。
そのため、銀つき革の革製品は値段がちょっとお高めなことが多いです。
サンドペーパーで加工する起毛革3つ
ここからは3種類、けば立った起毛の革の加工をご紹介。
どれもサンドペーパーを使って加工していきますよ。
ヌバック:革の表面を起毛させる
サンドペーパーを使って革の表面(銀面)を軽く磨き、起毛させる(⑰で実施)
起毛した毛足が短めで、きめ細かいものがヌバックです。
加工法は、革の表面をサンドペーパーで磨いて毛羽だたせる方法。
出来上がる革は手触りがしっとりしていて、繊細な質感を感じられます。
婦人用のハンドバッグや靴に使われていますよ。
ベロア:革の裏面を起毛させる
サンドペーパーを革の裏側(床面)にかけて、起毛させる(⑰で実施)
ヌバックが革の表面側の加工だったのに対し、こちらのベロアは革の裏側にサンドペーパーをかけて起毛させます。
ベロアの特徴としては、毛足が少し長めで起毛が粗いこと。
成牛の革が使われることが多いです。
カジュアルよりのブーツや手袋などに使われていますよ。
スエード:ヤギ革などの裏面を起毛加工
サンドペーパーを革の内側(床面)にかけて、起毛させる(⑰で実施)
スエードはベロアと同様に、革の内側にサンドペーパーをかけて加工します。
でもベロアと異なるのは、使われる革の動物が違うこと。
スエードには主にヤギやヒツジ、仔牛の革が使われます。
スエードは毛足が短めで均等なため、柔らかくなめらかな手触りです。
温かみがあるので、ブーツや手袋に使われることが多いですね。
床革:薄く切った内側のほうを使う
引用元:https://p-leather.net/?pid=146481909
皮を水平方向に2分割したうちの、内側(肉側)のほうを加工する(④と⑤の間に行う)。
サンドペーパーでベロアと同じように仕上げたり(⑰で実施)、表面に顔料を塗って仕上げる(⑱で実施)など加工法は様々。
床革(とこがわ)とは、厚さがある皮を薄く2枚にカットし、そのうちの元々内側(肉側)だったほうを使って仕上げる方法です。
加工法はいくつかありますが、そのなかでも代表的なのはベロアのように起毛させた「床(とこ)ベロア」。
海外ブランドでは表面のほうに顔料を厚く塗ってカーフのように仕上げて、「ラミネート加工牛床革」と表記して販売しているものもあります。
エナメル:表面を塗装
革の表面を、ウレタン樹脂などを使って「塗装」と「乾燥」を繰り返す(⑱で実施)
エナメルとは言葉の通り、表面にエナメル塗装をしてツヤツヤの革に仕上げる方法です。
パテントレザーと呼ばれることもありますよ。
加工は『塗装→乾燥』の流れを繰り返して光沢感を出していきます。
もともとの革の表面を打ち消した加工法ですが、水にも強くて耐久性もそれなりにあります。
しかし加水分解をするので、長年しまい込んでいたパテント製品を使う時には、表面がポロポロと剥がれ落ちてこないか注意して下さい。
礼装に使う靴やバッグなどによく使われているので、持っている方も多いかも知れませんね。
ガラス張り:平らに削って塗装
引用元:https://www.mensleathermagazine.com/pages/000174.html
なめした後に平らな板などに貼って乾燥させ、革表面をサンドペーパーなどで削ってなめらかにする(⑰で実施)。
その後、合成樹脂の塗料を塗って(⑱で実施)、つややかに仕上げる。
ガラス張りの革は名前の通り、ガラスのようなツルツルで反射するような表面に仕上げる加工をします。
ガラスレザーと呼ばれることもありますよ。
加工方法は、なめし後に乾燥させ、表面を平らにしてから塗料を塗るという流れです。
通気性がないので蒸れやすいことと、靴クリームが浸透しないので長持ちさせるのが難しいことがデメリット。
しかし水に強く、手入れができない=手入れ不要という意味では使い勝手が良く、学生靴のローファーやカバンなどに良く使われています。
もみ革:機械や人手でシワ加工
引用元:https://www.e-hankoya.com/sys/item-detail.php?item=40000000
革の表面を機械や手で揉みこんで、シワ模様をつける(⑳で実施)
もみ革は、シワ模様の加工がされた革です。
前半に出てきた「シュリンク革」が薬品を使うのに対し、こちらのもみ革は機械や人の手を使ってシワ模様をつけていきます。
もみ方によって名前が異なり、もむ方向が
- 1方向⇒水シボ(みずしぼ)革
- 2方向⇒角シボ(かくしぼ)革、角もみ革
- 多方向⇒八方もみ(はっぽうもみ)革
と呼ばれます。
もむ方向によって、出来上がる革の模様の雰囲気が違いますよ。
型押し:凸凹板を押し付けて模様付け
タンニンや混合なめしをした革の表面(銀面)に、模様のついた金属板をあてて圧力と熱をかける(⑳で実施)
型押しの革は、エンボスレザーとも言われます。
模様の型を押し当てて人工的に“動物の革の模様”をつける加工を行ったものです。
クロコダイルやオーストリッチなど、爬虫類(はちゅうるい)の革を使うことが多いです。
また、牛革に爬虫類の模様をつけることもあります。
模様はメッシュやシュリンクなど沢山の種類があり、本物ソックリの仕上がりで見分けがつきにくいものも。
用途は幅広く、財布から家具まで様々です。
毛皮:毛並みを傷めず綺麗に整える
毛が痛みにくいように薬剤を調合してなめしなどを行う。
その後、毛に栄養分を入れてブラッシングする(⑫あたりの工程で行う)
最後に、今までの「革」とはまた違った毛皮についても説明しておきます。
毛皮はよく知られている通り、毛がついたままの革のこと。
加工は、毛が縮れたり痛んだりしないように薬剤を調整しながら、なめしなどの工程が行われます。
後半の加工では毛に栄養を与えてツヤ感を出し、ブラッシングなどで絡んだ毛をほぐしながら毛の流れを整えて完成形へとたどり着きます。
毛皮は毛並みの良さが重要ですものね。
毛があると上品な印象をアップさせたり、ファッションにアクセントをつけることができますね。
毛皮の用途はショールやコートなどの衣類が代表的です。
以上、14種類の革の仕上げ方をご紹介しました!
まとめ
革の仕上げ方の種類って色んな方法があって、行われるタイミングもそれぞれ違うことをご紹介しました。
加工にはオイルやロウを使ったり、サンドペーパーを使ったりと使う物も様々。
エナメルやガラス張りの革は、見た目に革らしい風合いが残らないので、一見すると合皮と勘違いする人もいます。
でも元は動物の皮から出来ていて、わざわざ表面をなめらかにして塗装して・・・と手の込んだ作りなんですよ。
シワ模様ひとつでも、薬品や手作業によるものだったり、模様のついた板によるものだったりと仕上げられ方が何通りもありました。
次に革製品を見る時には、仕上げられてきた工程を想像してみるのも、また楽しいかも知れませんね。
もし身近に革好きの友人がいたら、シワ模様の仕上げ方クイズを出し合ったら盛り上がりそうですね(マニアックな会話に引かれないよう注意!)。