革製品は動物の皮から作られています。
1枚の皮からは色んな部位がとれ、1体の動物の中でもそれぞれ特徴や性質が異なります。
スーパーに並ぶお肉でも、肩ロースやもも肉など、色んな部位がありますよね。
料理に合わせてお肉を選ぶように、革製品も用途に合わせた部位の革を使うんです。
今回は、革はどんな部位で分けられていて、それぞれがどんな特徴があるのかをご紹介。
牛革を例にして解説していきます。
後半は革の線維(せんい)の向きについてのお話しもありますよ。
さぁあなたの持っている革製品はどの部位が使われているのか、読みながら考えてみましょう!
革の部位はこのように分かれています
まずは部位ごとの呼び方を確認しましょう。
これは牛をお腹から開いて切った革の図です。
ヘッド(頭)とレッグ(脚)の位置関係を見れば、革の向きがわかりますよね。
レッグやショルダーなどはよく聞く単語ですが、ベンズやベリーなど珍しい呼び方の部位もありますよ。
革の『厚さ』は革を加工する際に削られて調整されるので、一定にすることができます。
しかし、部位ごとの革の特徴や強度の差は均一にはできないので、製品に応じた部位が選ばれて使われるというわけなんです。
部位の名称9つとそれぞれの特徴
それでは各部位を順番に見ていきましょう。
先ほどの図にあった7つの部位に加え、後半2つは部位をまたいだ範囲の呼び方について説明していきます。
ヘッド(Head):頭
ヘッドという単語でもうわかると思いますが、頭の部分の革のことです。
人の頭皮もすぐ骨の感触がわかるように、牛の頭の革も薄く、強度はあまりありません。
ですので革製品としては用途がなく、使われることは殆どありません。
ネック(Neck):首
ネックは首の部分の革ですが、1頭から取れる面積がとても小さいのであまり使われません。
この部位の革はとても厚くて丈夫なのが特徴。
動物にとって、首の皮は頸動脈を守るために重要なものですものね。
用途としては、内装などの目立ちにくい箇所に使われます。
レッグ(Leg):脚
レッグももうお分かりだと思いますが、脚の革のことです。
よく動く脚の革は厚くて強度が高いため、耐久性が必要な革製品向き。
面積が小さいため、革小物に使われることが多いです。
具体的な用途としては、バッグの取っ手やお財布などの小物によく利用されます。
ショルダー(Shoulder):肩
ショルダーは肩の部位の革です。
よく動き、伸び縮みする箇所なのでシワが多くあります。
そのシワを模様として生かして革製品に仕上げられることもよくあるんですよ。
ショルダーの革の特徴は、柔軟性もあって強度も高いこと。
用途としては馬具に使われます。
ベンズ(Bends):背中から腰
ベンズとは、背中から腰にかけての革のこと。
面積が広く取れることと、丈夫で革の質が均一なため、革製品のメインの部分に使われます。
また、長さも取れるのでベルトやショルダーストラップなどの製品にも利用されることも。
革が伸びすぎたりせず、傷も少なめなので色んな革製品に大活躍の部位です。
用途としてはバッグの表面やベルトなど、様々です。
ちなみに、
- 背中から半分に分けたもの⇒シングルベンズ
- 分けずに左右がつながったままのもの⇒ダブルベンズ
と呼びます。
「シングルベンズ」「ダブルベンズ」・・なんだかカッコいい響きだと思いません?(笑)
ベリー(Belly):お腹
ベリーはお腹の革です。
柔らかさがあって、軽いのが特徴。
その柔らかさから伸びやすいという欠点があるため、革製品では強度が求められる部分には向いていません。
ですので主に製品の内側に使われます。
用途としては靴の中敷きやバッグの内装に使われることが多いです。
バット(Butt):お尻
バットはお尻の革です。
人のお尻の皮膚もつるんとしているように、牛のお尻の革もシワが少なく綺麗な見た目です。
更に、厚みとコシがあって丈夫なので、質の高い革とされています。
馬でもお尻の革はコードバンといって、人気がありますよ。
用途としては、お財布からもう少し大きめな革製品まで幅広く使われています。
サイド:背中から半分にした革
ここからは、部位をまたいでいる部分的な名称になります。
革を購入する際に使うことが多い言葉ですよ。
まずはサイドです。
サイドは大人の牛の大きい革を背中で半分に分けたもので、ヘッドやレッグなどの全ての部分を含んだものです。
大きな面積の革製品を作る時や、取っ手などのパーツまで同じ革で丸ごと作りたい場合にサイド単位で購入されたりします。
クロップ:背中からベリーの途中まで
次はクロップです。
これは背中から半分に分けた後、背中と並行にベリーを切ったもの。
ヘッドやネックも含まれています。
この切り方だと、ベリーが途中までしか含まれていません。
それは、ベリーは柔らかくて伸びない性質があるため、用途が限られているという点が関係しています。
その時に作ろうとする製品にベリーが不要だという場合には、クロップの区切り方で購入されることが多いんですよ。
伸び方は線維の流れによって変わる
ここまで、革製品は用途に合わせた革の部位が使われるという説明をしてきました。
革製品が作られる際にはそれに加えて、繊維(せんい)の流れも考慮されているってことを最後にお話ししておきますね。
革は線維(せんい)から出来ています。
革の強度などの状態は、この線維の絡んだ度合いや密度で変わってきます。
そして繊維には方向があり、1枚の牛革で見るとこのようになっているんですよ。
これは矢印の向きに沿って伸ばすと、伸びにくい(強度が高い)ということを表しています。
例えば革のバッグを作る場合、入れた荷物の重みは重力でバッグの下部にかかってくるので、革の繊維の向きをこのように合わせます。
線維の向きを伸びにくい方向に合わせることで、型崩れを防いで綺麗なシルエットで使い続けられるということなんです。
製品の用途によって適切な革の部位を選び、さらに繊維の方向まで考えて革製品は作られているんですよ。
ちなみにベリーは線維の方向があまり揃っていなくて伸びやすいため、表になるようなメイン部分には向いていません。
バッグがビローンと伸びてきたら困るものね~。
まとめ
革の部位について、それぞれの特徴を見てきました。
頭の革が薄いとか、お尻の革はシワが少なくて綺麗だとか、なんだか人間の革と共通する部分もありましたね。
革の部位だけでなく、線維の方向によっても強度が違うことも説明しました。
革製品を作る職人さんは、様々な条件を考慮して作ってくれているんだなぁと改めて実感。
このあと持っている革製品をじっくり眺めて、革の部位予想をしてみようと思います。
あなたも、もし複数の革製品を持っていて厚さや柔らかさが異なるようであれば、それぞれどの部位なのか想像してみると面白いですよ♪